詩・池井昌樹/写真・植田正治/企画と構成・山本純司による写真絵本「手から、手へ」(集英社)を読みました。
正月に実家にて、母が購入したこの本を見せてもらったのですが、その内容に感動。
自分でも手元に置いておきたくなって手に入れた一冊です。
「手から、手へ」概要
この「手から、手へ」は、池井昌樹氏の詩と、植田正治氏の写真でつづられた、「写真絵本」。
谷川俊太郎・賢作さん親子の朗読にインスピレーションを受けた、集英社の山本純司氏(※本書出版前に集英社を退社)が企画したものです。
池井昌樹氏の詩「手から、手へ」に、植田正治氏の家族写真を織り込んで作られた一冊。
全編を通して、見開きの右に池井氏の詩、左に植田氏の写真、という体裁です。
※厳密には「絵本」ではないのですが、「あとがき」内の表現より「絵本」としてご紹介します。
親から子へ、思いを込めたメッセージ
やさしいちちと
やさしいははとのあいだにうまれた
おまえたちは
やさしい子だから
おまえたちは
不幸な生をあゆむのだろう
集英社「手から、手へ」より
出だしの一節。
「やさしいちち・はは」から産まれた「やさしい子」。
そんなおまえたちは「不幸な生をあゆむ」であろう。
いきなりの厳しい言葉に、インパクトを受けます。
険しい道を進むであろう子どもたちに対して、親は何もしてやれない。そして苦難から、そのやさしさを捨てたくなることがあるかもしれない。
子どもたちよ、そんな時は―。
生きること自体が苦しくもある世の中。それを望むと望まざるとに関わらず生きていく子と、彼らを憂う親の思い。そして子の幸せを願う祈り。
訥々と、しかし力強く語られる詩とモノクロで綴られる家族写真から、子どもに対して心の底から振り絞った、厳しくも温かいメッセージが伝わります。
今を生きる「子どもたち」への一冊
この「手から、手へ」の詩は、「親から子へ」という体裁を取っています。
しかしそれは、例えば今存在している現実の親子、といった直接的なもの以上に、これまでに在った「全ての親」から今を生きる「全ての子(人)」へ、といった意味合いを含めているように感じます。
そのメッセージは基本的に、今を生きる全ての人に向けたもの。
いま親じゃなくっても、いま子どもじゃなくっても、心に響くものがあるはず。
特に辛く、苦しい状況にある人ならば、最後に綴られる言葉と写真に、きっと心うたれるのではないでしょうか。
私は本書を読んで、私を育ててくれた親のみならず、それ以前から私につながる全ての人へ思いを馳せました。
ああ、みんなそんな気持ちを持って生きてきたのかな、と。
そして同時に望みます。未来を生きる子どもたちが、苦しい時にこのメッセージを受けとって少しでも救われたら。
2016年の新年に出会ったこの「手から、手へ」。いつまでも手元に置いておきたい、大事な一冊となりました。
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