NHKテレビドラマの原作小説である、近藤史恵氏の小説「はぶらし」を読みました。
本書「はぶらし」は、2015年1月5日より「はぶらし/女友だち」として、NHK BSプレミアムで全8回が放送されるそうです。
私はBSプレミアムは残念ながら視聴環境外なんですよね…。
近藤史恵氏の小説については、過去に「ダークルーム」「サクリファイス」「エデン」を読了。癖のない、読みやすい小説を書かれる作家さん、という印象です。
特に自転車のロードレースをテーマにした「サクリファイス」は、スポーツとサスペンスが見事に融合。手に汗握るおもしろさがあります。
「はぶらし」あらすじ
脚本家として順調なキャリアを積む鈴音は、36歳にして恋人と別れたばかり。仕事とそれ以外のバランスについてつい悩んでしまう。
そんな折にかかってきた、高校時代の同級生・水絵からの呼び出し。
不審に思いながらも切羽詰まった彼女の声に負け、相談に乗る鈴音。
子持ちで離婚、職も失った水絵は行くあてもなく、再就職のために一週間だけ、鈴音のマンションに泊めて欲しいと懇願する。
心の奥で妙なざわめきを感じつつも、水絵の願いを承諾する鈴音。かくして水絵親子との共同生活が始まるのだが…。
感想
読書前にあらすじから想像した通り、水絵の態度にイライラ。期待通りです。
一般常識から少しズレている水絵。妙な理屈を振りかざし、意識してかそうでないのか、鈴音の人の好さにつけ込んで、ジワジワと彼女の生活を侵食していきます。
同性でありながら立場の違う二人の「噛み合わなさ」が、何とも言えない歯がゆさを感じさせます。
序盤で鈴音が、水絵に対して決定的な不快感を感じるのが、タイトルにもなっている「はぶらし」にまつわるエピソード。
鈴音が母子に対して貸した歯ブラシ。彼女が想像していなかった形で返ってくることになるのですが、このちょっとイヤ~な感じの表現がうまい。
読者に拭い切れないモヤモヤを植え付けます。
そして学生時代とは立場が変わり、環境に差がついてしまった二人。ぶつかり合い、互いの意見は平行線をたどる。
相手の願いをどこまで受け入れるべきなのか、というテーマについて、自分だったらどうするか?
考えるうちに、モヤモヤに拍車がかかります。
ただサスペンス要素を期待し過ぎると、少し肩透かしかも。水絵はズレているといっても、極度にクレイジーというわけではありません。
嫌なキャラクターとしては、もう一つ突き抜けきれなかった感があります。
物語に対するイライラは期待通りでしたが、もっともっと、読者に嫌がらせをしてくれても良かったかな。
水絵にも同情できる事情があったりして、「悪役」として憎みきれなかったのは、やや物足りなかったところ。
一方、サスペンスとしてではなく、解説で評されている通りこれを「女友達」の話として読めば、また別の角度からの深み・おもしろみも、確かに感じます。
ドラマ版はどうなの?
NHK BSプレミアム版では、鈴音役に内田有紀、水絵役に池脇千鶴という配役です。これはなかなかはまりそうな印象。
特に池脇千鶴は、ものすごい嫌らしい演技をしてくれるのでは。テレビの前でイライラする人が続出しそうです(笑)。
予告編も見ましたが、原作にはない濡れ場もあったりして、ドロドロした展開になりそう。
29分✕全8回ということで、内容もボリュームアップが期待できそうです。
前述の通り私は視聴ができませんが、また動画サービスなどで配信されたらチェックしてみたいところ。
まとめ
というわけで、近藤史恵氏の小説「はぶらし」の読書感想でした。サクッと読みやすい小説です。
氏の別作品としては、個人的に「サクリファイス」がイチオシ。気になった方はまたチェックしてみてください。
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