前回のエントリで、入院したことを書きました。今回は入院前に購入し、院内で読了した本をご紹介。
最初に選んだ二冊が、たまたま本屋さんに関する本だったので、ついでにもう一冊購入。計3冊の、「本屋さんの本」を読みました。
早川義夫「ぼくは本屋のおやじさん」
筑摩書房の創業70周年フェアにて見つけた一冊。
著者の早川義夫氏は、22歳でロックバンドをやめて書店を開業。のち書店をたたんで、再び歌手になられた、という経歴をお持ちの方。
そんな早川氏が、川崎市で22年間書店を経営されていた時のお話。
本書は1982年に出版された本に、別書籍の一部を追加して、ちくま文庫から出版されたもの。
なので時代としては若干古いのですが、描かれる「街の本屋さん」の本質は変わりません。
出版社や取次とのやり取り、お客さんへの対応、書店経営の内実などが赤裸々に描かれ、とてもおもしろい。
特に「なぜ本屋に欲しい本がないのだろう」という章は、興味深い内容。
大ヒットしている書籍でも、小型書店の店頭にはそれが並ばない現実を、配本や返本など書籍流通の限界に触れながら、早川氏は憤ります。
私も昔、小さな書店で注文した本が発売日に届かないことを、不思議に思ったことがありますが、そんな裏幕があったのね。
…と、本屋事情や本に対する気持ちについて、「本屋のおやじ」が飾ること無く心情を吐露したエッセイ。
早川氏の実直な姿勢が随所に垣間見えて、楽しく読めました。
本書を読むと、街の本屋さんに対する見方が少し、変わるのではないでしょうか。
北條一浩「わたしのブックストア」
2012年出版の単行本を、文庫化にあたって再編集した新編集版。
全国の「小さな本屋さん」が、新刊書店・古書店の区別なく、写真・特徴・店主さんへのインタビューなどを交えながら、紹介されています。
ま、「全国」といっても掲載書店17店のうち7割は、東京の書店なんですが。
しかし紹介されている書店は、どれも粒ぞろい。
店内の写真や店主さんの思い入れ・お店の成り立ちなんかを読むと、「ああ、本屋っていいなぁ」とほっこり。
書店業以外にも取り組んでいる試み・イベントなどを知ると、「街の本屋さん」の新たな顔が見えたり。
私は東京へはなかなかいけませんが、掲載されている中で訪問できそうなのは、京都の恵文社・一乗寺店と、岡山の蟲文庫かなぁ。
いつか訪れてみたい、憧れの書店が増えました。
宇田智子「本屋になりたい この島の本を売る」
こちらは入院直前に電子版を購入。
上でご紹介した「わたしのブックストア」でも紹介されている、沖縄の古本屋「ウララ」の店主・宇田智子氏の著書。
新刊書店の店員を経て、沖縄の市場で古書店を開業された宇田氏。
そんな彼女の本や業界への思い、また本屋の仕事と出会いなどが、優しい文体で語られます。
仕入れや在庫、棚の作り方や本の手入れなど、古書店の仕事も詳細に語られ、実におもしろい。
古書店開業などに興味のある方の参考にもなるのでは。
本書では、本にまつわる「沖縄」という土地の、特殊な事情も語られます。
沖縄の出版社による県産本の売れ行き、新刊の発売の遅れ、沖縄の歴史による独特な出版社事情など。
他県ではあまり見られない(と思われる)内容、知らなかったなぁ。
そして本書のもう一つの魅力は、挿絵を担当されているのが高野文子さんであること。
宇田さんの優しい文章と、高野さんの流れるような線がマッチ。書籍に華を添えています。
高野文子さんのファンにもチェックしてほしい一冊です。

最後に
本を売る書店の表側・裏側を描いた本を読む。
メタな感じで大変おもしろかったです。
お金を入れる財布をお金で買う的な…
ちょっと違うか。
こちらの田口幹人「まちの本屋」も読みたかったのですが、ハードカバーなので今回はパス。また機会があれば読んでみたい一冊です。
以上、入院中に読んだ「本屋さんの本」でした。
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