【小説】私の好きな篠田節子作品10選【おすすめ】

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小説家・篠田節子さんの作品を良く読みます。

篠田氏は、文業25週年を迎えられるベテラン作家さん。私が氏の作品を好む理由は

  • 社会・SF・ホラー・サスペンス・芸術(絵画・音楽他)・宗教など、ジャンルが多彩。
  • 多彩な知識と綿密な取材から生み出されるリアリティ。
  • がっつり読める長編と気軽に読める短編、どちらもクオリティが高い。
  • 基本的に暗い(個人的な好みw)。

などなど。

どの作品を読んでもとても質が高く、読後に満足を得ることが多いです。

そんな篠田作品ですが、まとめサイトやおすすめの小説エントリーを読んでもあまり作品名が挙がらないような気が。

なのでまだ氏の作品を未読の方に興味を持っていただきたく、私がこれまで読んだ中でオススメの篠田作品を長編・短編に分けてご紹介します。

なお私は氏の作品を手にとって5年ぐらいの篠田作品ビギナーなので、「これを読んでいないなんて!」という作品があるやもしれません。その際はご容赦を。

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長編

「聖域」

聖域 (集英社文庫)著者:篠田節子出版社:集英社発行日:2008-07-23

異動先の編集部で、偶然目にした未発表の原稿『聖域』。なぜ途中で終わっているのか。なぜこんなに力のある作家が世に出ていないのか。過去を辿っていくと、この原稿に関わったものは、みな破滅の道へと進んでいる。口々に警告されるが、でも続きを読みたい、結末を知りたい。憑かれたように実藤は、失踪した作家、水名川泉を追い求め東北の地へ。そこで彼が触れたものは。長編サスペンスの傑作。(Amazon商品説明より)

初めて読んだ篠田作品。「長編サスペンスの傑作」というよりは、すごくスピリチュアルな内容。

女性作家の謎や生い立ちもさることながら、主人公の「編集者の執念と狂気」が印象に残った作品。

一気読みした後、とてもぐったりしたのを覚えています。作家・水名川泉の描く文中小説もおもしろい。

「ハルモニア」

ハルモニア (文春文庫)著者:篠田 節子出版社:文藝春秋発行日:2001-02-10

脳に障害をもつ由希が奏でる超人的チェロの調べ。言葉を解せず、道徳を持たない女性にもたらされた才能は、中堅どころの音楽家によって恐るべき開花を遂げる。しかし、難曲をこなし、自在に名演奏を再現してみせるその旋律には、自己表現が決定的に欠けていた。彼女の音に魂を吹き込もうとするチェロ奏者・東野。<天上の音楽>にすべてを捧げる二人の前に次々と起こる超常現象と奇怪な事件。崇高な人間愛と世俗の欲望を圧倒的筆力で描く文芸ホラー長篇。(Amazon商品説明より)

篠田作品の魅力の一つに、「芸術に対する造詣の深さ」があります。そんな芸術分野の一つ「音楽」を題材に据えたホラー作品。

といっても本作は怪奇ものではなく、サイコ・スリラーでしょうか。

しかしこの作品の魅力は恐怖にあらず。音楽を通してぶつかり合い、分かり合い、繋がろうとする人々の姿に、心は釘付け。

情緒を持たないがゆえに、コピーとしての天才的な演奏を可能とする少女と、彼女になんとしても「彼女自身の音楽」を演奏させようと尽力する主人公の、せつなく苦しい物語です。

「神鳥-イビス」

神鳥(イビス) (集英社文庫)著者:篠田節子出版社:集英社発行日:1996-10-23

夭逝した明治の日本画家・河野珠枝の「朱鷺飛来図」。死の直前に描かれたこの幻想画の、妖しい魅力に魅せられた女性イラストレーターとバイオレンス作家の男女コンビ。画に隠された謎を探りだそうと珠枝の足跡を追って佐渡から奥多摩へ。そして、ふたりが山中で遭遇したのは時空を超えた異形の恐怖世界だった。異色のホラー長編小説。(Amazon商品説明より)

和テイストのホラー。

「時空を超えた異形の恐怖世界」という説明がちょっと安っぽいのですが、この「神鳥」、おもしろいです。

そして個人的に篠田氏のホラー作品の中で、1番怖い。

「三十路でバージンの女性イラストレーター」と「下品なバイオレンス作家」という主役コンビの設定が、篠田作品としては奇抜な方だと思うのですが、このキャラクターだからこそ生きるラストが印象的。

「コンタクト・ゾーン(上・下)」

コンタクト・ゾーン著者:篠田 節子出版社:毎日新聞社発行日:2003-04

ノンキャリ公務員の真央子、買い物依存症の祝子、不倫の恋に悩むOLありさの三人組は、バカンス先のバヤン・リゾートで、テオマバル国の内乱に巻き込まれる。ゲリラの手に落ちた島で、虐殺を逃げ延び、彼女たちは生き残れるのか…?圧倒的なスケールで、異文化接触地点での女たちの闘いを描いた感動巨編。(Amazon商品説明より)

東南アジアの「テオマバル」(架空の国です)で内乱にあった女性三人が、異国の地で怒涛の逃避行を続け、やがてそれぞれが生きる道を見つけ出す、というストーリー。

「逃避行」と書きましたが、とある村での生活描写が物語の大きいウェイトを占めるので、それを期待するとちょっと肩透かしかも。

しかし日本以外では日本の理屈が通じない、なんてのは当たり前。そんな世界の片隅で「否応なく異文化に巻き込まれた日本人」の行く末にハラハラします。

そして女性はやっぱりたくましいな、などと感心したり。

「夏の災厄」

夏の災厄 (角川文庫)著者:篠田 節子出版社:KADOKAWA / 角川書店発行日:2015-02-25

東京郊外のニュータウンに突如発生した奇病は、日本脳炎と診断された。撲滅されたはずの伝染病が今頃なぜ?感染防止と原因究明に奔走する市の保健センター職員たちを悩ます硬直した行政システム、露呈する現代生活の脆さ。その間も、ウイルスは町を蝕み続ける。世紀末の危機管理を問うパニック小説の傑作。(Amazon商品説明より)

とある市で突如猛威を奮った、致死率の高い新種の日本脳炎。発生源も感染ルートもわからず、対応もままならない病原体に為す術はないのか-?

病原体によるパニックの恐怖とともに、ワクチンの知識や行政の対応・限界、そして災厄に立ち向かい奔走する人々などを、多角的に描く本作。

エンターテイメントとしても、実際に起こりうる自体のシミュレーションとしても、見どころの多い一冊です。

近年エボラ、デング熱、鳥インフルエンザなどが日本でも話題になりましたが、そのような名前を聞くたびに、本書を思い出してしまいます。

短編

「はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか」

はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか (文春文庫)著者:篠田 節子出版社:文藝春秋発行日:2014-07-10

駿河湾で揚がった巨大ウナギを食べた人間が食中毒にかかった。原因はウナギの体内に残留していたレアメタルのパラジウム。非鉄金属を扱う会社の社員・斎原は、そのウナギが日本の資源確保の切り札になると確信し、生息地を追ったが…(「深海のEEL」)。科学技術に翻弄される人間たちを描く、現代の黙示録。

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」が、そのタイトルの元ネタなのは言わずもがなの表題作「はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか」ほか、SF短編全4編。

「深海のYrr(イール)」をもじった「深海のEEL(イール=ウナギ)」など、SF作品のオマージュであろうタイトルにニヤリ。

ストーキングするラジコンカーの謎を描いた表題作はじめ、各話とも派手さはありませんが、しっかりとした作りで引きこまれます。

基本的には現代を舞台にした良質なSF作品群ですが、4編目「エデン」のみ、幻想的でちょっと毛色の違った一作。こちらもオススメ。

「死神」

死神 (文春文庫)著者:篠田 節子出版社:文藝春秋発行日:1999-10-10

本当に困っている人はだれ? 市の福祉事務所に勤めるケースワーカーの仕事は、毎日が事件の連続だ。金もなく、子どもと公園で野宿する女性は、それでも働こうとしない。ケースワーカーを脅迫するバーのママ。結婚詐欺を繰り返してきた72歳の老女。アルコールに人生を蝕まれた男。かつては成功しながら栄養失調で保護された作家。社会からはみだした、ときにしたたかな「弱者」たちにどう対したら良いのか、日々奮闘するワーカーたちの事件を描いた連作短篇集。(Amazon商品説明より)

福祉事務所のケースワーカー達を描いた、連作短編集全8編。

「死神」というタイトルからホラーを想像させますが、至って社会的な内容です。「ケースワーカーだって人間よ」という、登場人物の言葉が印象的。

昨今、生活保護の話題が世間をにぎわしますが、本作を読むと社会の底辺にいる弱者、そしてそれを支えるために奔走する人々について、ちょっと見方が変わるかもしれません。

「家鳴り」

家鳴り (集英社文庫)著者:篠田節子出版社:集英社発行日:2012-09-20

妻が際限なく太っていく─。失業中の健志を尻目に、趣味で始めた手芸が世間の注目を集め、人気アーティストとなった治美。夫婦の関係が微妙に変化するなか、ストレスとプレッシャーで弱った妻のために健志が作り始めた料理は、次第に手が込み、その量を増やして…(「家鳴り」)。些細な出来事をきっかけに、突如として膨れ上がる暴力と恐怖を描いたホラー短篇集。表題作を含む7篇を収録。

ホラー短編全7編。ちょっと嫌げな話が多めですが、ビックリ箱的な恐怖ではなく、じわじわ迫り来るようなそれが、何とも癖になる話ばかり。

地震によって少しずつ生活が狂っていく恐怖を描いたパニック作品「幻の穀物危機」。これはリアリティがありすぎて怖い。読んだ後は「日本で略奪は起こらない」とは思えなくなりました。

その他、施設で暮らす少年と豚の不思議なつながりを描いた「青らむ空のうつろのなかに」も、考えさせられる一作。

「静かな黄昏の国」

静かな黄昏の国 (角川文庫)著者:篠田 節子出版社:KADOKAWA / 角川書店発行日:2012-05-25

「ようこそ森の国、リゾートピア・ムツへ―」化学物質に汚染され、もはや草木も生えなくなった老小国・日本。国も命もゆっくりと確実に朽ちていく中、葉月夫妻が終のすみかとして選んだのは死さえも漂白し無機質化する不気味な施設だった…。これは悪夢なのか、それとも現代の黙示録か―。知らず知らず“原発”に蝕まれていく生を描き、おそるべき世界の兆しを告げる戦慄の書。3.11後、著者自身による2012年版補遺収録。(Amazon商品説明より)

恐怖小説全8編。書籍説明にある原発の話は表題作一編のみなので、あまりその方面の内容を期待しないよう。

日常に潜む怖さ、不可思議な現象、少しSFっぽい話など、収録作品のバリエーションは様々ですが、どれも背筋がヒヤリとするような恐怖があります。

祭り囃子に使われる「笛」が引き起こす恐怖を描く、純・和風ホラー「陽炎」が適度に怖く、印象的な一編。

恋愛ゲームにのめり込み過ぎた作家の顛末を描いた「ホワイト・クリスマス」は、女性である篠田氏が書いたかと思うととても感慨深い内容、というか良くかけるなぁ。

本当に引き出しの多い作家さんです。

「レクイエム」

レクイエム (文春文庫)著者:篠田 節子出版社:文藝春秋発行日:2002-04-10

「腕を一本、芋の根元に埋めてくれ」大教団幹部の伯父から託された奇妙な遺言。謎の答えは遠い異国の大自然に埋もれていた。衝撃的な事実が神秘の世界を呼び起こす表題作ほか、幼児虐待の不気味さを描く「コンクリートの巣」など、別世界へ扉を開けてしまつた孤独な現代人の心の闇に迫る六つの幻想短篇集。

末期がんで死を間近に控えた夫とその妻が、夫の故郷で過ごした哀しくも不思議なひとときを描いた「彼岸の風景」。

ノンキャリ役人の独身女性が、街中で見かけたコヨーテを追って奇妙なマンションに迷い込む「コヨーテは月に落ちる」。

など、現実的な話の多い(恐怖小説でさえも)篠田氏にしてはめずらしく、比較的幻想的な雰囲気に寄った短編集。

現実から非現実にふと迷い込んでしまったような、不思議な読後感。

まとめ

以上、長編5冊+短編5冊=計10冊の篠田節子作品をご紹介しました。

直木賞を獲った「女たちのジハード (集英社文庫)」や、山本周五郎賞を受賞した「ゴサインタン―神の座 (文春文庫)」などは未読なので、若干偏りがあるかもしれませんが、所有している(積読含む)篠田作品計22冊のうちから10冊を選んでみました。

最新作「インドクリスタル」も好みのジャンルなのでまた読んでみたい。ご紹介した中から、本好きの方の食指が動く一冊が見つかれば幸いです。

●耳で聴くビジネス・リラックス・エンターテインメント。

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