いまさらですが、ずっと積ん読になっていた桜木紫乃「ホテルローヤル」を読了しました。第149回直木賞を受賞している作品です。
読み始めたらあっという間。非常に味わいのある、おもしろい小説でした。
本作は、ラブホテル「ホテルローヤル」を舞台にした短編集。
収録作品は「シャッターチャンス」「本日開店」「えっち屋」「バブルバス」「せんせぇ」「星を見ていた」「ギフト」の7編です。
感想
各話の主人公達は、誰も彼も幸せな境遇にあるとは言いがたい人間ばかり。
挫折を抱えた恋人にヌード写真の撮影を迫られる事務員。
貧乏寺の窮状を自らの体で支える住職の妻。
ホテル廃業を迎える女性経営者。
妻の不倫に衝撃を受ける高校教師…。
しかしともすれば暗くなりがちな設定は、淡々とした描写によって、悲哀とユーモアが交じり合った独特な空気を感じさせます。
特に前述の高校教師と、彼の教え子である、ちょっと問題をかかえた女子高生の交流を描く「せんせぇ」。
妻の裏切りに打ちのめされた教師が、教え子に疎ましさを感じつつ、やがて心を通わせていく過程が、何とも心に染み渡ります。
「性」の営みを象徴する「ラブホテル」という建物を舞台に、人々の「生」を感じさせる短編集「ホテルローヤル」。
読後にせつなくも良い余韻を残してくれる小説でした。
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