小野不由美氏のホラー小説「残穢」を読みました。読みは「ざんえ」で、「穢」は「けがれ」です。 先日【小説】夏に読みたい怖い小説10選というエントリーを書きましたが、出版から日が経っている本が多め。たまには新しいホラーも読みたいと思い、店頭で見かけた本書を購入。
小野不由美さんは「十二国記」や「屍鬼」で著名な作家さん。私は「屍鬼」を読んだことがあります。本書は2012年にハードカバーで出版された小説の文庫版で2015年7月発売。2016年1月には竹内結子・橋本愛主演で『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋‐』として映画化されるそうです。
「残穢」あらすじ
畳を擦る音が聞こえる、いるはずのない赤ん坊の泣き声がする、何かが床下を這い廻る気配が……。
だから、この家には人が居着かない。
何の変哲もないマンションで起きる怪異を調べるうち、ある因縁が浮かび上がる。
迫りくる恐怖は、どこまでが真実なのか。
──衝撃のドキュメンタリー・ホラー!
(小野不由美『残穢(ざんえ)』特設サイト|新潮社 より)
というストーリー。「ドキュメンタリー・ホラー」というのが今ひとつピンとこないかもしれませんが、劇中の「私」がどうやら小野不由美氏自身、のようです(明示はないですが)。「私」と怪異に遭遇した本人であり協力者となる「久保さん」が、現象の原因を掘り下げるべく調査を進めるのですが、その中に実在の怪奇蒐集家や怪談作家なども登場。その辺りが「ドキュメンタリー」なのでしょう。ただこの小説自体はフィクションともノンフィクションとも判断がつかないので、私はドキュメンタリー「風」であると解釈しています。
感想
では感想。怪奇現象とそのルーツを日本の住宅事情なども掘り下げながら丹念に追っていく様はまさに「ドキュメンタリー」っぽくて雰囲気があります。またところどころに挟まれる怪奇エピソードもなかなかゾッとするものが。ただ「黒い家」や「リング」のような迫力・読者を追い込むスリル感を期待すると、ちょっと肩透かしかも。そもそも山場と呼べるものがありません。ドキュメンタリー風なので狙って書いておられると思うのですが、もうちょっと盛り上がりが欲しかったところです。
…と、実はこの「残穢」とともに店頭に並んでいる本が。
こちら。怪談小説「鬼談百景」です。こちらは百物語的な短編を99編集めたもの。「残穢」とどちらを買おうか迷ったのですが、長編小説を読みたかったので「残穢」を選択。ただ読了した後に調べると、どうも「残穢」とこの「鬼談百景」、関係のある本のようで。
Amazonのレビューを読むに「鬼談百景」99編をまとめた作家を主人公にした本が「残穢」で、「残穢」が100話目ともとれるとかとれないとか。「鬼談百景」に「残穢」の伏線もあるようで、こら読む順番間違えたかなー。こういう大事なことは帯にでも書いておいてよ!と思いましたが、「残穢」は新潮社で「鬼談百景」は角川なのでそれは無理筋。「鬼談百景」を読んでから本書を読むと、もう少し違った読後感だったかもしれません。
というわけで私はちょっと心残りのある読了となってしまいましたが、これから「残穢」を読もうと思われる方は、「鬼談百景」とどちらを先に読むかご検討の上ご購入ください。私も機会があれば「鬼談百景」を読んでみたいと思います。
【追記】
怪談小説「鬼談百景」、読みました!
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