探偵・葉村晶のお仕事/文庫「静かな炎天」「暗い越流」感想 | ネットタイガー

探偵・葉村晶のお仕事/文庫「静かな炎天」「暗い越流」感想

10月に若竹七海さんの新刊2冊を買いました。一冊は2014年に出た単行本の文庫版「暗い越流」、もう一冊は待望の葉村晶シリーズ最新刊「静かな炎天」です。「静かな炎天」は8月に発売されていたのですが気付かず(痛恨!)、10月の購入となりました。

著者の若竹七海さんは数多くの作品を発表されていますが、

一貫して人の心の中に潜む悪意を描いているところに特徴

があるそうです(若竹七海 – Wikipediaより)。私も若竹さんの作品をいろいろ読んできましたが、確かに読んでて描かれる「悪意」にモヤッと来ることがありますね…。だがそれがいい!そのモヤモヤがクセになるのです(基本暗めの話好き)。

では2冊とも読み終わったので感想など。

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感想「暗い越流」

  • 蠅男
  • 暗い越流
  • 幸せの家
  • 狂酔
  • 道楽者の金庫

の計5短編を収録。「暗い越流」は第66回日本推理作家協会賞短編部門受賞作品。「蠅男」「道楽者の金庫」は女探偵・葉村晶が登場する作品です。

めっちゃおもしろかった!特に「狂酔」が素晴らしい。他の短編は三人称視点ですが、これのみ一人称とイレギュラーな作り。何やらある場所で人々を前にひとり語りをする男。男の語る異様な内容と次第に明らかになるシチュエーション、そして驚愕のラスト。実にインパクトのある話でした。大満足。

葉村晶が登場する「蠅男」「道楽者の金庫」も実にシリーズらしい納得の作品。葉村晶の磨きがかかった不運さに同情しつつも、終盤でちゃんと「落として」くれる。特に「道楽者の金庫」では「さよならの手口」につながるミッシングリンク、葉村晶が「MURDER BEAR BOOKSHOP」で働くきっかけが描かれ、ファンならば必読。他のに作品「暗い越流」「幸せの家」もこれまた若竹氏らしい作風で、毒っ気が実にいい感じです。

感想「静かな炎天」

こちらはすべて葉村晶が活躍する最新短編集。

  • 青い影 七月
  • 静かな炎天 八月
  • 熱海ブライトン・ロック 九月
  • 副島さんは言っている 十月
  • 血の凶作 十一月
  • 聖夜プラス1 十二月

の全6作に加え、「さよならの手口」に続く「富山店長のミステリ紹介ふたたび」を収録。

感想は…キレッキレですね!実におもしろい。初登場時二十代だった葉村晶もついに四十代。四十肩に苦しむハードボイルド探偵となりました。葉村晶が偶然遭遇した大事故に端を発する「青い影 七月」、ひっきりなしの依頼を順調にこなす女探偵だがその裏で起こっていたのは…「静かな炎天 八月」など、葉村晶の半年間の活躍が描かれます。

最近、過去作「依頼人は死んだ」を読み直しているのですが、約20年前と比べると葉村晶含め本書全体の雰囲気はだいぶ丸くなった印象。しかしラストの衝撃はそれ以上!ユーモラスさがアップした分、若竹氏描く「悪意」がより際立つのでしょうか。

葉村晶シリーズ紹介

そんな若竹作品2作読了の感想。いずれも大変満足しました。ところで「葉村晶って誰?どんなシリーズがあるの?」という方も多いかと。そんなあなたにシリーズを軽くご紹介。私はシリーズものはできれば最初から読みたい派。知らずに途中から読んでしまうとどうにも落ち着きません。探偵・葉村晶シリーズはもちろん最新作から読んでもOKですが、やはり彼女の「歴史」があるのでその変遷を知っておくとより楽しめることうけあいです。

プレゼント

  • 海の底
  • 冬物語(※)
  • ロバの穴
  • 殺人工作(※)
  • あんたのせいよ
  • プレゼント(※)
  • 再生
  • トラブル・メイカー

以上、計8編収録。葉村晶はフリーター、のち長谷川探偵調査所所属。二十代後半。なお本書は葉村晶と小林警部補が交互に活躍する形式。※印の付いている話に葉村晶は登場しません。また以降の葉村晶シリーズについては文春文庫から出版されていますが本書は中公文庫で、電子化はされていません。本書を読んでいなくても問題はありませんが、どうにも最初から読まないと気の済まない方(私のような)は紙書籍をどうぞ。

依頼人は死んだ

  • 濃紺の悪魔(冬の物語)
  • 詩人の死(春の物語)
  • たぶん、暑かったから(夏の物語)
  • 鉄格子の女(秋の物語)
  • アヴェ・マリア(ふたたび冬の物語)
  • 依頼人は死んだ(ふたたび春の物語)
  • 女探偵の夏休み(ふたたび夏の物語)
  • わたしの調査に手加減はない(ふたたび秋の物語)
  • 都合のいい地獄(三度目の冬の物語)

以上9編の連作短編を収録。長谷川探偵調査書を退職後、同所のフリー調査員として活動する葉村晶。彼女の関わるブラックな事件の数々。

悪いうさぎ

葉村晶シリーズ、初の長編。行方不明になった女子高生たちの行方を追う晶。しかし真相を追ううちに彼女の身に危機が…。

私はもともとこの作品で葉村晶を知りました。文庫版で450ページ超の大作。「依頼人は死んだ」でウォーミング・アップを終えたら本作で葉村晶の冒険をあますところなく楽しみましょう。ちなみに葉村晶は三十代突入です。

暗い越流

上記紹介の一作。5短編のうち「蠅男」「道楽者の金庫」に葉村晶が登場します。

さよならの手口

「道楽者の金庫」に引き続き吉祥寺のミステリ専門書店「MURDER BEAR BOOKSHOP」でバイト中(探偵は開店休業状態)の葉村晶。古書引取の際に発見した白骨死体を端に謎に関わってゆきます。過去作に比べるとだいぶユーモラスな表現が増えた気がします。主人公も歳を取って丸くなった?「このミス」2016年の第4位作品。

まとめ

そして最新作「静かな炎天」へとつながる葉村晶シリーズの紹介でした。ミステリーの中ではハードボイルドといった位置づけになりますが、決して堅苦しくなく重すぎず。シニカルかつユーモラスな語り口につい引き込まれ、そして油断しているとラストでガツン!とやられる探偵小説です。また仕事はできるが不運な女・葉村晶の不幸度合いにも磨きがかかってきて?目が離せません。ちなみにもしシリーズが実写化されるとしたら、葉村晶役には佐藤仁美さんの顔が思い浮かぶのですがどうでしょうか…?興味を持たれた方はシリーズを手にとって、彼女の顔を想像してみてください。

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