【小説感想】「犯罪」フェルディナント・フォン・シーラッハ | ネットタイガー

【小説感想】「犯罪」フェルディナント・フォン・シーラッハ

GWに、長らく気になっていた翻訳小説「犯罪」を読みました。本書はドイツの小説家にして刑事弁護士であるフェルンディナンと・フォン・シーラッハの描く短編集。収録の全11編は現実の事件に材を得て描かれているそうです。

【本屋大賞翻訳小説部門第1位】一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の末っ子。エチオピアの寒村を豊かにした、心やさしき銀行強盗。──魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される犯罪者たち。弁護士の著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの真実を鮮やかに描き上げた珠玉の連作短篇集。2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に輝いた傑作! 解説=松山巖

上記あらすじ・紹介はAmazon商品ページ「犯罪 (創元推理文庫)」 より。なお文庫化にあたり増補改訂を行っているそうです。

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「犯罪」感想

各話とも、ただ淡々と「犯罪」が描かれます。例えば最初の一編「フェーナー氏」。これは開業医として社会的に成功した老医師の半生、そしていかにして妻を殺害するに至ったか、が極力抑揚をおさえた文体で著述されます。加害者である老医師に対する作者自身の怒りや悲しみその他感情はほとんど表現されません。

そんな感じで全11編、実在の事件に着想を得た「犯罪」がひたすら描かれます。ギャングの話、裕福な姉弟の話、犯罪者一家に産まれた異能な末弟の話、などなど。どれも実に興味深い内容。多少の謎要素も絡めつつ展開される各登場人物の人生、そして犯した罪。

そしてすべてを読み終えて得た読後感は…特段の感慨は沸かなかったというか。あまりにも淡々と描かれているからでしょうか。どの話も大変おもしろいのですが、良い小説を読んだ後の高揚感は得られませんでした。

しかし本書を読んだ後に、現実に起こった犯罪の話にニュース等で触れると…。「犯罪」が産まれた背景を想像せずにはいられない。日々触れては消え、触れては消える事件の背後に隠れた「人生」につい思いを馳せてしまいます。「事件」は単なる「事象」ではあるが、その背後には「人間」がいる。

そして再び本書の序文を読むと、実に興味深い一文が書かれていたことに気づきます。裁判官だった著者のおじ(故人)が、親友に残した手紙に書いた言葉。

「物語は込み入っていることが多い。罪もそういうものののひとつだ」

「犯罪」はつまり、それを描いた小説、だということです。

こちらはシーラッハの別作品。

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