【小説】スキマ時間に楽しい読書。おすすめの短編小説15選 | ネットタイガー

【小説】スキマ時間に楽しい読書。おすすめの短編小説15選

短編小説

短編小説をよく読みます。短編集のいいところは

  • 一冊の本で多彩な内容を楽しめる。
  • 通勤時間や病院の待ち時間などに気軽に読めて区切りをつけやすい。
  • はずれの長編より良作をいくつか含んだ短編の方が、一冊を通しての読後感が良い物になる。
  • 作者の傾向を測るのに手頃。

などなど。長編ももちろん好きですが、それとはまた違った魅力が短編集にはあります。というわけで私がこれまでに読んだ短編小説の中で、「おもしろかった!」と感じた作品を集めてみました。なお本エントリーの書籍紹介は全てAmazonより引用しています。

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津原泰水「蘆屋家の崩壊」

幻想怪奇譚×ミステリ×ユーモアで人気のシリーズ、新作「奈々村女史の犯罪」(書き下ろし)を加えて再文庫化。猿渡と怪奇小説家の伯爵、二人の行く手には怪異が――。

三十路で定職に就いていない「おれ」と小説家の「伯爵」が出会う恐怖の数々。わずか7Pの冒頭作「反曲隧道(かえりみすいどう)」からグワシッとハートを掴まれる。ああ、そういうタイプの小説なのね、これ、とニヤリ。びっくりやえげつない描写ではなく心理的にゾッとさせる、味わいのある怪奇譚。続編に「ピカルディの薔薇」があります。「蘆屋家の崩壊」がおもしろかった方はこちらもどうぞ。

野尻抱介「沈黙のフライバイ」

アンドロメダ方面を発信源とする謎の有意信号が発見された。分析の結果、JAXAの野嶋と弥生はそれが恒星間測位システムの信号であり、異星人の探査機が地球に向かっていることを確信する――静かなるファーストコンタクトがもたらした壮大なビジョンを描く表題作、一人の女子大生の思いつきが大気圏外への道を拓く「大風呂敷と蜘蛛の糸」ほか全5篇を収録。宇宙開発の現状と真正面から斬り結んだ、野尻宇宙SFの精髄。

「ふわふわの泉」「太陽の簒奪者」を描いた野尻抱介氏のSF短編集。地球外文明との静かなるファーストコンタクトを描いた表題作はじめ、宇宙への憧憬を掻き立てられる良質なSF全5編。ひょんな思いつきから高度80キロを巨大凧で目指す女子大生を軽快なテンポで描く「大風呂敷と蜘蛛の糸」は、「ふわふわの泉」を彷彿させるワクワクの止まらない面白さ。広大な宇宙を読む者の心に描き出すSF短編集です。

池井戸潤「シャイロックの子供たち」

とある銀行の支店で起きた現金紛失事件。女子行員に疑いがかかるが、別の男が失踪!? “叩き上げ”の誇り、格差のある社内恋愛、家族への思い、上がらない成績……事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤。銀行という組織を通して、普通に働き、普通に暮らすことの幸福と困難さを鮮烈に描いた傑作群像劇。

とある銀行を舞台にした連作短編集。銀行出身の池井戸氏ならではの、金融の職場で働く人々の喜びや苦しみ・葛藤などを描いた作品…かと思いきや、女子行員の現金盗難疑惑、それを調査していた行員の失踪など、途中から何やらきな臭いミステリー展開に。短編集としても、そして一つの長編として読んでもおもしろい一冊。

森見登美彦「きつねのはなし」

「知り合いから妙なケモノをもらってね」籠の中で何かが身じろぎする気配がした。古道具店の主から風呂敷包みを託された青年が訪れた、奇妙な屋敷。彼はそこで魔に魅入られたのか(表題作)。通夜の後、男たちの酒宴が始まった。やがて先代より預かったという“家宝”を持った女が現れて(「水神」)。闇に蟠るもの、おまえの名は? 底知れぬ謎を秘めた古都を舞台に描く、漆黒の作品集。

「簡単なことだよ。君の下宿は石油ストーブかい?」
「いいえ、電気ヒーターです」
「それが私は欲しい」

古道具屋で女性店主の下、アルバイトをする大学生の「私」。ふとした失敗から、得意先の「天城さん」と取引をすることになり-。(表題作「きつねのはなし」)
古都にひっそりと潜む「魔」を、静かに訥々と紡がれる文章からじわじわと感じる全4編。京都の持つ独特の空気が話の端々から伝わってくるのは京大出身の森見氏ならでは。是非夜中に一人で読んでいただきたい一冊。

姫野カオルコ「よるねこ」

深夜の寄宿舎を徘徊し、出会った者の魂を奪うという巨大な青い猫の噂。どこにでもある「学校の怪談」のはずだったが、母は女学生時代にその猫を見たことがあるのだという…。平穏な日常に潜み、ふいにその姿をのぞかせる恐怖。その本質を描く、著者初のホラー短編集。一度読んだら一生夢に出てくる、そんな物語が詰まっています。本当の怖さを知りたい人だけ、読んでください。

2014年に「昭和の犬」で直木賞を受賞されたのも記憶に新しい、姫野カオルコ氏のホラー短編集。何気にペラペラとページをめくって読み進めていくと、ふとした瞬間に背中をゾッとかけめぐる悪寒。そんな怖さを感じさせてくれる表題作「よるねこ」はじめ、全9編。倉庫で働く吉田(♀)が出会った不思議な人物の話「心霊術師」にちょっとほっこり。あ、これはホラーじゃないね。

横山秀夫「第三の時効」

殺人事件の時効成立目前。現場の刑事にも知らされず、巧妙に仕組まれていた「第三の時効」とはいったい何か!? 刑事たちの生々しい葛藤と、逮捕への執念を鋭くえぐる表題作ほか、全六篇の連作短編集。本格ミステリにして警察小説の最高峰との呼び声が高い本作を貫くのは、硬質なエレガンス。圧倒的な破壊力で、あぶり出されるのは、男たちの矜持だ――。大人気、F県警強行犯シリーズ第一弾!

F県警の強行犯に属する男たちを描いたミステリー。時効を迎える殺人事件の犯人を挙げるためにその身内の近辺で待ち受ける刑事たち。逃亡する犯人を捕えんと刑事が張った罠、「第三の時効」とは?ー。短編ながらも長編をしのぐ仕掛けと迫力。一編一編が息の詰まるような謎と展開で、読者の脳に休むヒマを与えない。男たちの執念を感じる緊迫の警察小説。泥臭い男たちの執念が素敵。

小松左京「霧が晴れた時」

太平洋戦争末期、阪神間大空襲で焼け出された少年が、世話になったおやしきで見た恐怖の真相とは……!? 名作中の名作「くだんのはは」をはじめ、小松左京の家に伝わるおまじないが創作のヒントとなった「まめつま」、謎の生物と神話的世界を交錯させた「黄色い泉」など、小説界に今なお絶大なる影響を与えつづける小松左京のホラーテイスト作品を選りすぐった傑作短編集。

基本的にホラーですが、SF・怪奇・伝奇ものから少し不思議な話まで、小松左京氏の描いた恐怖世界を集めた短編集。戦時中にとある屋敷で少年が経験した恐怖、「くだんのはは」は必見。他、表題作「霧が晴れた時」「保護鳥」「影が重なる時」などがおすすめ。どの話も昭和に書かれたものですが、普遍的に面白い小説には時代など関係ないのだな、と思うことしきり。

林譲治「ウロボロスの波動」

西暦2100年、太陽系外縁でブラックホールが発見された。その軌道を改変、周囲に人工降着円盤を建設し、全太陽系を網羅するエネルギー転送システムを確立する―この1世紀におよぶ巨大プロジェクトのためAADDが創設されたが、その社会構造と価値観の相違は地球との間に深刻な対立を生もうとしていた…。火星、エウロパ、チタニア―変貌する太陽系社会を背景に、星ぼしと人間たちのドラマを活写する連作短篇集。

近未来、太陽系外縁で発見されたブラックホールの起動を変え、その周囲に人工降着円盤を建設し、巨大なエネルギー転送システムを作り上げ…まあいいや。読んでください。スケールが大きすぎて脳内にイメージを作り上げるのが難しいのですが、SF描写の壮大さ・緻密さ・リアリティと、物語を盛り上げるサスペンス・スリル要素がものすごく面白い。人間とAIの齟齬、巨大なプロジェクトにまつわる推進派と反対派の武力闘争など、一度はまると一気読み必至。遙かなる未来と人間ドラマに手に汗握るSF連作短編集。

横山秀夫「深追い」

交通死亡事故の実況検分中に、被害者のポケットベルを拾った交通課警察官。死んだ男の妻は、昔の恋人だった。彼女は夫の死後も連日のように、ポケベルに晩の献立を送ってくる。「コンヤハ カレー デス」――。 ポケベルを返すに返せなくなった「制服警察官」が最後に気づく、真実とは?
地方都市の警察署を舞台に、組織に生きる人間の葛藤を描いた、比類なき警察小説。心に沁みる横山小説の真骨頂!!

かつて海で溺れたところを青年たちに救われた少年はやがて警官となり、その時に亡くなった一人の青年の家への宿泊が毎年の恒例となっていた。それも最後にしようと誓った年、警官は一つの真実に行き着く-。(「又聞き」)
とある警察署に勤務する7人の男たち。鑑識係・少年係・会計課と、普段ミステリーの主役となるような花形とは少し違った役割を担う彼らが出会った事件。そこに描かれる深い人間ドラマに引き込まれる警察小説計6編。刑事ばかりが「警察」ではないよね。

向田邦子「思い出トランプ」

浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。おきゃんで、かわうそのような残忍さを持つ人妻。毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。やむを得ない事故で、子どもの指を切ってしまった母親など――日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、狡さ、後ろめたさを、人間の愛しさとして捉えた13編。直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を収録。

全13編。本書タイトルの「トランプ」は「13」から来ていると思われます。初版は昭和58年なので、さすがに文化・風俗的に平成も四半世紀を過ぎた現在から見ると「懐かしい感」があります。しかし確かに昭和を生きた人々の情念や息遣いを感じる、何とも味わい深い短編集。こういう時代も確かにあったのだなぁ。

筒井康隆「くさり」

地下にある父親の実験室をめざす盲目の少女。ライフルを手に錯乱した肥満の女流作家。銀座のクラブに集った硫黄島での戦闘経験者。シリアスからドタバタまで、おぞましくて痛そうで不気味な恐怖体験が炸裂。

筒井康隆大先生のホラー短編集。ホラー…?うん、まあ怖い話もありますが、高確率で人の狂ういつもながらの筒井節炸裂な話も多々収録。少女の暮らす家の地下室から聞こえるくさりの音-表題作「くさり」から、日常の風景にスパイがあふれかえる「台所にいたスパイ」まで、安心の筒井文学を楽しめる一冊です。そして私はわずか1Pで描かれた宇宙が所在のない不安を掻き立てる「到着」を収録しているところに、本書の魅力を何より感じるのであります。

高村薫「地を這う虫」

「人生の大きさは悔しさの大きさで計るんだ」。拍手は遠い。喝采とも無縁だ。めざすは密やかな達成感。克明な観察メモから連続空き巣事件の真相に迫る守衛の奮戦をたどる表題作ほか、代議士のお抱え運転手、サラ金の取り立て屋など、日陰にありながら矜持を保ち続ける男たちの、敗れざる物語です。深い余韻をご堪能ください。

全4編。各話の主人公達はいずれも元刑事。かつて権力側にいた人間ということで市井の人間とはまた違った感覚を持つ彼らが、忸怩たる思いを抱きつつも地べたを這いずりまわるがごとく生きていく様が描かれます。十数年振りに再読しましたが、昔は理解の及ばなかった男たちの思いを感じ取れたことに喜びを感じ、しかしその一方で自分がその年齢に到達したことに少し恐れおののいたり。しかし高村氏の描く男たちは本当に泥臭くていい。

沼田まほかる「痺れる」

十二年前、敬愛していた姑が失踪した。その日、何があったのか。老年を迎えつつある女性が、心の奥底にしまい続けてきた瞑い秘密を独白する「林檎曼荼羅」。別荘地で一人暮らす中年女性の家に、ある日迷い込んできた、息子のような歳の青年。彼女の心の中で次第に育ってゆく不穏な衝動を描く「ヤモリ」。いつまでも心に取り憑いて離れない、悪夢のような9編を収録。

ふとしたことから若い男と同居をすることになった女性に芽生えた狂気、はたまたゴミにうるさい老人を亡き者にしようと練った殺人計画。「九月が永遠に続けば」の沼田まほかる氏による、日常をちょっと踏み外してしまった人々の物語全9編。沼田氏は主婦→僧侶→会社経営を経て作家になったという変わり種。ささいなきっかけから暴走する植木職人を描いた「テンガロンハット」は怪作だと思う。

島田荘司「毒を売る女」

夫に性病をうつされ、それが不治の病いと知ったとき、若妻は狂った。大道寺靖子は、秘密を打ち明けていた友人とその家族に対して、次々と鬼気迫る接触をはじめ…(毒を売る女)。“糸ノコとジグザグ”という風変わりな名のカフェ・バー。だが、店名の由来には、戦慄すべき秘密が…(糸ノコとジグザグ)。本格推理の旗手が精選した、サスペンス&トリックの自信作。

御手洗潔シリーズや吉敷竹史シリーズで有名な島田荘司氏の短編集。本作収録の中で注目は何といっても「糸ノコとジグザグ」。「糸ノコと~」という名前のカフェ・バー。「私」がその風変わりな店名の由来を尋ねると、バーテン氏は一冊の本を取り出した-。疾走感のあるトリッキーな話が島田氏らしい、心に残る一編。

角田光代「空中庭園」

家族のことが、好きですか?郊外のダンチで暮らす京橋家のモットーは「何ごともつつみかくさず」。でも、ひとりひとりが閉ざす透明なドアから見える風景は…。連作家族小説の傑作。

東京郊外のとある「ダンチ」で暮らす家族それぞれの視点から描かれる連作短編集。「何事もつつみかくさず」がモットーの家族だが、実は各々秘密を抱えています…ってそんなのどんな家族でも大なり小なりあると思うのだけれど、ある話で脇役だった人間に別の話でスポットが当たり、そしてその内面を垣間見てしまった時、何とも言えない生々しさ、そして怖さを感じてしまうのです。※ホラーではありません。

まとめ

以上、おすすめの短編小説15選でした。気軽に読める短編集、カバンに入れておいたりスマホ・タブレットに保存しておくと、ふいに時間が空いた時にとても役に立ちます。寝る前に好きな話を好きなだけ読む、なんて読み方もいいですね。ご紹介した中にご覧の皆様の食指が動く一冊があれば幸いです。

上記には含めませんでしたが、以前のエントリーで紹介した篠田節子さんも魅力的な短編集を出されています。よろしければこちらもご覧ください。「はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか」「死神」などなどオススメ。

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