全1巻で完結するおもしろい漫画 | ネットタイガー

全1巻で完結するおもしろい漫画

※2016/4/6更新

近年、電子書籍環境がソフト的にもハード的にも急速に整備されて、また紙の本よりも安価に購入できるケースが増えて、以前よりも若干、漫画購入の頻度が上がったような気がします。というかジャケ買い・予備知識無しの購入が増えました。しかし歳を取ったからでしょうか、巻数の多い漫画に手を出すのがしんどくもなりました(読みたいけど)。

そこで「漫画読みたい熱」が高まってきた時は、少ない巻数、特に単巻で完結している漫画を購入します。そんな私がおすすめする全1巻・単巻完結のおすすめ漫画一覧、全25作品です。前半がストーリー物、後半が短編集・連作短編集です。

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ストーリー物

「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」押見修造

自分の名前をスムーズに発音できないがために苦しむ主人公「大島志乃」。そんな彼女が新生活で迎える、出会いと友情の物語。押見氏自身の経験がもとになっている(あとがきより)という吃音症の表現が非常にリアル。そして志乃と友人になる加代、志乃を傷つけた男子・菊地との、高校生らしい不器用さを含んだ繊細な人間関係の描写が秀逸。なにより読者の想像力を掻き立てる、キャラクターたちの表情がすばらしい。読むたびに新しい発見がある、多くの人に読んで欲しい漫画です。

「アオとハル」しおやてるこ

高3でボッチになった男子・アオが図書館で一目惚れした少女・ハル。しかしハルは過去にアオのことを知っているよう。そしてハルにはなにやら暴力の影が…、というお話。いろいろと救われない設定もあるけど、基本的には高校生の純な、本当に純粋な恋愛ストーリー。頭も腕力もないけれど、ハルのために真剣に怒り、戦い、そして泣いたアオの姿に心打たれました。タイトルは「アオとハル」だけど、青臭くない青春漫画。

「FLIP-FLAP」とよ田みのる

普通の青年・深町くんが、ピンボールへの普通じゃない情熱を持つ山田さんに恋したことから始まる、熱血青春ピンボール漫画。ピンボールってゲーセンにあるアレです。ちょっとアンダーグラウンドな感じもするゲームが、かくも見事に熱い漫画になる。素晴らしい!読み進めていくうちに、あなたも深町くんと一体化して、知らず知らずのうちに手に汗を握っていることでしょう。

「夜よる傍に」森泉岳士

夜間だけ視力が上がる少女と不眠症の青年。夜に出会った二人が幻の絵本「夜をさがして」を求めて不思議な体験をする、という幻想的なお話。作者・森泉岳人氏はその表現技法が独特。まず水で描いた描線に墨を落とす。そして爪楊枝・割り箸などで細部を仕上げていくそうです。モノクロで描かれる優しい線は「絵」でもあり「絵本」風でもあり「絵画」のようでもあり。読んでいるうちにその世界の虜になってしまう、不思議な作風です。

「天国の魚(パラダイス・フィッシュ)」高山和雅

地球に衝突する巨大彗星から逃れようとシェルターへ非難した5人の家族たち。衝撃から目覚めた彼らは、異世界に別人として存在していた。家族を待ち受ける数奇な運命とは―。というSF漫画。静かに描かれる家族の流転。これぞSF!という満足感を得られる漫画です。電子書籍は出ていないのでご注意。

「五色の舟」津原泰水+近藤ようこ

2014年の「メディア芸術祭マンガ部門大賞」を受賞した全1巻の漫画。「見世物小屋」一座が未来を予言する「くだん」を探し求め、そして…という物語。津原泰水氏の幻想的な世界が、近藤ようこ氏の手によって哀しくも美しく描かれています。内容的には近年、描きにくいタイプの物語ではあると思うのですが、単行本化、そして賞をとったということで、一度目にしておいても損のない漫画であると思います。なお津原氏の作品は小説「蘆屋家の崩壊 」「ピカルディの薔薇 」もオススメです。

「新月を左に旋回」衿沢世衣子

「ユウコ」と「このは(このはずく様)」のちょっと不思議な物語。いやー、好きなんですよ、衿沢世衣子さんの漫画。ポップでライトにサクッと楽しめる。これまでの衿沢作品と比べてちょっと(ほんとにちょっと)ダークな雰囲気も感じられるところが新しい。主人公のもとにちょっと不思議な存在がやってくる、という設定が「オバQ」など藤子作品を彷彿とさせます。軽い気持ちで楽しめるおすすめの漫画。

「霧の中のラプンツェル」あらい・まりこ

ナチス政権を握り、ドイツ国内でユダヤ人が迫害されていた時代。ユダヤ人少女・ラケルと彼女の家族の行末が、表題にもある「ラプンツェル」をはじめとしたグリム童話をモチーフに描かれます。逆境にありながらユーモアを忘れないラケルを微笑ましく思いながらも、戦時下の過酷・異常な環境にショックを受けます。ラストはやや中途半端な印象も受けますが、それが却って想像力を高めるのではないでしょうか。作者のあらい・まりこさんはコミカルな作品が多い方ですが、そのテイストを活かしつつ真正面から戦争問題に取り組んだ秀作。

「星のポン子と豆腐屋れい子」小原愼司+トニーたけざき

これね!何て説明しようか困るなぁ(笑)。全てがネタバレに即つながりそうで。姉弟と宇宙から来た謎の生き物ポン子のふれあいを描いたハートフル漫画www、ということで勘弁してください。いい意味で表紙サギ、と言っておこう。原作の小原愼司氏は「二十面相の娘」、作画のトニーたけざき氏はガンダム・エヴァンゲリオンなどのパロディ漫画で著名な方。

「アンダーカレント」豊田徹也

銭湯を営みながら不可思議な失踪をした夫を待つ主人公・かなえ。そこに銭湯組合の紹介と称して寡黙な男があらわれて―。静かな漫画。とにかく静寂。が、それゆえにキャラクターの思い・表情が実に深く読者に迫ってきます。時にコミカルな表現も交えながら、人と人、男と女の出会いと交錯を描く、大人のドラマ。しっとりした映画を見たような読後感が待っているでしょう。

「U」今日マチ子

女性研究者が作った自身の「コピー」はやがて「オリジナル」に殺意を抱き…というSFサスペンス漫画。作者は「みかこさん」で有名な今日マチ子氏。今日氏独特のやわらか・淡々とした線にいつもはほっこりするのですが、怖い系の漫画で見るとうっすらとした肌寒さを感じます。同氏の他の全1巻完結作品としては「COCOON」もおすすめ。

短編集・連作短編集

「彼女のカーブ」ウラモトユウコ

「マンガ・エロティクス・エフ」に掲載されていた漫画のをまとめた短編集。掲載誌のタイトルからそっち系な話が多いのかと思いきや、ほっこりいい話・笑える話が多くて楽しかった。これまたいい意味で表紙サギ。姉を亡くした少年と姉の恋人とのやりとりを描いた「姉の薬指」、エレベーターガールのうなじにある魅力的な黒子を押してしまった男の奇妙な顛末「エレガのほくろ」、ネイリストを目指す女性が苦手な義姉を試験のパートナーとして選ぶが…「兄嫁のつめ」などなど。ウラモト氏の漫画を初めて読んだのですが、日常の風景をユーモアに転化するのが実に上手な作家さんですね。あ、工口はほとんど無いです。

「祈りと署名」森泉岳土

「[イリーナ]シリーズ」と題された連作「祈りと署名」「惜しまず与えよ」「灯は消えてイリーナは」3編、及びその他作品を収録した全1巻完結の短編集。森泉氏独自の墨を使用した描法が、セクシャルかつミステリアスな内容とマッチ。魅力的な世界観を形成しています。上でご紹介した「夜よる傍に」もそうですが、森泉氏の絵は馴染んでくるとクセになってしまう魅力があります。

「ドミトリーともきんす」高野文子

「科学者たちの言葉」を伝える読書案内漫画。朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹がもし「ドミトリーともきんす」に下宿していたら…?というifもの。よろしければ過去記事をどうぞ。

高野文子「ドミトリーともきんす」―『科学者たちの言葉』を伝えるおすすめの漫画

「これでおわりです。」小坂俊史

ユニークなタイトルのオムニバス・コメディ。「おわり」をテーマにした全16編。「最後の卒業生」「最後の一杯」「最後の曲」など、様々なシチュエーションの「最後」がコミカルに描かれます。各話とも「そう来たか」とくるオチにニヤリ。気軽に読める一冊です。

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【漫画】小坂俊史「これでおわりです。」【感想】

「おとろし」カラスヤサトシ

昔話風のような時代物と現代物を織り交ぜた、各話6Pの短編を24編収録したホラー漫画集。ちょっといい話・悲しい話も含む…なんて短編集にありがちな展開は一切ありません。どの漫画もちゃんと「怖さ」を追求しているところを評価したい。ねっとり、後味良くない系の話を楽しみたい方におすすめ。

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「おとろし」-ねっとり怖いカラスヤサトシのホラー漫画

 「スキエンティア」戸田誠二

「世にも奇妙な物語」で映像化もされた「ボディレンタル」を含む短編集。日常にちょっとSF風味をプラスし、そして「生きること」を考えさせてくれます。ごく普通の人々の生活に、ちょっと光が射すような瞬間が好き。「覚醒機」に登場する主人公の友人が、ラストに発する熱い言葉になんだか「人生」を感じました。

「奈知未佐子短編集 ~思い出小箱の15粒~」奈知未佐子

童話・昔話風の創作漫画を全15編収録した短編集。心温まってホロリとくる話が優しい絵柄で描かれて、なんだかなつかしい気持ちになります。電子版も出ていますが、できれば紙書籍を買って子どもと一緒に楽しみたい一作。

「説得ゲーム」戸田誠二

戸田誠二作品もう一本。「自殺志願者を説得したらクリア」というゲームの開発者を探す表題作「説得ゲーム」、脳だけ生き残った女性と相対する研究者達を描いた「キオリ」など、書き下ろし二編を含む全5編の短編を収録。「スキエンティア」同様ライトなSF要素を絡めつつ、人間の在り方を描いたヒューマンドラマ。特に男性が妊娠できる世界を描いた「クバード・シンドローム」は全男性に一度読んで欲しい漫画。これを読むと妊娠・出産に対する見方が変わるはず。名作。

「フロイトシュテインの双子」うぐいす祥子

「死人の声をきくがよい」のひよどり祥子氏が別名義で書いたホラー漫画。美しい双子の家庭教師をすることになったひ弱な男子大学生が出会った恐怖…。っていうか実質ギャグ漫画だと思います(笑)。ホラーも突き抜ければ笑いになる、というか作者さんは狙ってやってると思いますが。実におもしろい。シャレのわかる方に読んでいただきたい。表題作は3編、他収録作は短編です。

「地上の記憶」白山宣之

現代劇「陽子のいる風景」「ちひろ」、時代劇「Picnic」「大力伝」、冒険譚「Tropico(前・後編)」の計5編を収録した短編集。2012年に病没された作者・白山氏の遺作集でもあります。「陽子のいる風景」「ちひろ」はじめ、写実的な描き方にとにかく感銘を受けました。ドラマのワンシーンを丁寧に切り取って描いたようなコマ、何度見ても飽きません。漫画の魅力・可能性を見せてくれる短編集です。

「スノウホワイト グリムのような物語」諸星大二郎

諸星氏によってアレンジ・漫画化されたグリム童話の数々。私は諸星ファンなので楽しく読みましたが、諸星漫画初心者にはおすすめしにくいかも…。でも氏の作品に触れたことのある方ならば、読めば読むほど味の出るスルメのような面白さがあります。本書収録の「ラプンツェル」は、同じくグリム童話を題材にした「グリムのような物語 トゥルーデおばさん」にも別の内容で描かれているので、読み比べてみると面白いかも。他に「奇妙なおよばれ」「コルベス様」が程よくブラックで好み。この漫画を読んで「グリム童話」について意外と知らなかったことを認識しました。

「伊藤潤二自選傑作集 」伊藤潤二

ホラー作家・伊藤潤二氏が自選した短編集。伊藤氏は数多くの短編を描かれているのでどれを読んだらいいか迷う!という時にオススメしたい一冊。名作「首吊り気球」はじめ、濃密な恐怖を楽しめます。一歩間違えればギャグにもなりかねない内容をホラーの領域にとどまらせる手腕はさすが。そして伊藤氏の発想と広がりに感心すること必至です。

「運命の女の子」ヤマシタトモコ

「無敵」「きみはスター」「不呪姫と檻の塔(のろわれずひめとおりのとう)」の三編を収録。サイコホラー・青春・ファンタジーとそれぞれ毛色の違った漫画を楽しめる作品集。ジャンルはバラバラですが、どれも物語に「芯」があって良いです。これを書きながら「無敵」を再読しましたが、怖いね…。ジワジワきます。ヤマシタ トモコ氏のこういう漫画をもっともっと読みたい。

こちらでも紹介しています。

多彩なヤマシタ節が楽しめる ―ヤマシタトモコ「運命の女の子」

「瓜子姫の夜・シンデレラの朝」諸星大二郎

再び登場、諸星御大。こちらも「スノウホワイト」同様、昔話を下敷きに諸星氏が独自のアレンジを加えた作品集ですが、和物・洋物・中華物を取り混ぜているところがおもしろい。「瓜子姫~」は「妖怪ハンター」でも取り上げられた題材ですが、同作とは関係ありません。農民が美しい女房の秘密に触れる「見るなの座敷」、少女が地獄の釜を垣間見る「悪魔の煤(すす)けた相棒」、そして中華な雰囲気たっぷりの「竹青」など、諸星ワールドが堪能できます。

まとめ

以上1、全1巻・単巻完結のおすすめの漫画・25作品でした。ここに挙げた漫画以外でも、九井諒子「ひきだしにテラリウム」、朱戸アオ「ネメシスの杖」、有永イネ「さらば、やさしいゆうづる」、庄司創「三文未来の家庭訪問 庄司創短編集」、豊田徹也「珈琲時間」などなども全1巻完結の漫画としてオススメです。

少数巻で完結する漫画はいいですね。ちょっと漫画が読みたい時に気軽に手を出せるし、読んだことのない作家さんの作風を知るのにも役立ちます。これからも未知の単巻・全1巻の漫画にたくさん手を出していきたいと思います。

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